ドイツの『Fußball』という文化

サッカーという文化

先日,僕がお手伝いさせてもらっているサッカークラブの試合を初めて見に行った.

彼らは日本で言えば中学校1,2年生.レベル的にはそんなに高くないし,うまいとは言えない選手が多い.彼らを指導しているのが,ハイデルベルクで僕がお世話になっているMaurice.彼は17歳から指導者として活動している.今の彼らは決して強いチームではないけれど,子どもたちは本当に楽しそうにサッカーに取り組んでいる.

 

僕は毎週行けるわけではないが,手伝える時は練習を出来るだけ手伝うようにしている.何より,彼らとの練習は楽しい.その楽しさの裏にはMauriceのしっかりとした準備がある.様々な本を読み,Youtubeなどから情報を得て,彼らのレベルに合わせてメニューをアレンジしている.

 

練習は基本的に週2回,ドイツでは社会人でブンデスリーガを戦うチームでも,週に練習は3回くらいだ.土日はどちらか試合があることが多いから,サッカーをやるのは週に3回,1回2時間という感じ.

 

そんな僕が見た,彼らの初めての試合.
結果だけ見ればいつも負けが先行.厳しいんだろうなと思っていた.

 

しかし,4-3で劇的な勝利を挙げる.本当に素敵な顔をして見ていた僕にまでハグしてくる始末.いつも勝つためにトレーニングしているわけではない.でも,試合で勝ちを目指して必死にボールに食らいつき,声を出して無我夢中で走ってる彼らから,確実に大切な何かを受け取った気がする.

そんな素敵な休日を過ごしたある日曜日.


僕とサッカー

ある1人の少年がサッカーと出会ったのは8歳の時.いやもっと前からボールを蹴って遊んでいたから,サッカーを習い事として始めたのは8歳の時だった.

毎日日が暮れるまで,公園や家の前でボールを蹴って遊んでいた.少しずつ上手になるのが嬉しかったんだろう.

 

最初はただの球蹴りだったのが,勝ち負けや,ポジション争いなんかが出てくる.トレセンなんかにも行って,地区のうまい子どもたちともサッカーをした.その頃,その少年はゴールキーパーとしてプレーするようになっていた.

 

中学校に上がると,少し遠いクラブチームでプレーすることに.週に4回,交通費もバカにならないのに,よく両親は通わせてくれていた.でも,小さい頃にサッカーに没頭していなかった.ミスが怖かったし,練習に行くのが嫌な日もあった.それでもサッカーを続けたのはなんでなんだろう?

 

高校では有名な指導者のもとでサッカー.なんとあのオシムと友達なんだ.部員が70人,キーパーは7人いた.それでもその少年はチャンスをもらい,試合に出ていた.1年生でメンバー入りしてきっと天狗になっちゃったんだろうな.そしてその先生はよく,

サッカーは,ロボットや動物ではなく,人がやるスポーツ.必ず,人となりが出る

と言っていた.

 

高校2年の時,彼はどん底を見た.全く試合に出られない.サッカーノートを書いて先生に出すのが部の中にルールだったけど,ある時から,一言もノートに書かれず,見たという確認のハンコももらえなかった.

 

初めてサッカーと,自分と向き合った.自分はどうしたらもっと上手くなれるのかを考えて朝も夕方も練習.学校生活でも自分がどんな人になりたいのか考えながら生活した.

 

3年生の夏,試合に出られないかもしれないと思いつつも,多くの部員と一緒に辞める道を選ばず,秋までプレーした.その結果,確実に選手として,人として成長して高校を卒業できた.先生は最後まで彼を見ていたし,信用していたようだった.そして彼はこんな言葉をもらった.

お前が手を抜かないでプレーするから,他の選手は誰も手を抜けない.後輩たちはそんなお前をずっと見てきた.

これからもずっとサッカーと関わろうと思える言葉だった.

 

しかし,高校では試合に出られず,悔しい思いをしたから,本州の大学でもっと自分の実力を試したいという思いがあった.だが,前期の受験で落ちてしまい,北海道教育大学釧路校という,グラウンド一面も取ることができず,北海道サッカーリーグで3部に所属する部活動に入れることになった.

 

決して,下手ではない.むしろいい選手が揃っているのに,練習に来る人が少ない,試合だけ出る,変な上下関係,指導者の不在など…

どれだけ高校のサッカーが充実したものだったのかを痛感しながら,なんとなく活動に参加する日々が続いた.学年が上がっていくと後輩もできてくるし,自分自身の役割も大きくなっていく.なんとかこのチームを少しでもよくしたいと考えるようになっていった.練習メニューを考えたり,ミーティングを開いたり,関東遠征を企画したり,チームのために自分はにができるかを考えるようになった.

 

勝つためにと色々策を講じたが,結局4年生の時もリーグ戦で勝つことができず,上のリーグには上がれなかった.でも苦しみながら試行錯誤してチームをどうしたらよくできるか考え続けた日々,チームメイトと過ごした日々はきっとずっと忘れないものになったと思う.

 

大学を卒業して選手としては,もうプレーせず,指導者としてサッカーと関わろうと思うようになっていた.高校の時の先生のところでGKコーチをやらせてもらい,子どもたちの指導について学んだ.

 

その延長線上にあったドイツ留学.結果的にドイツでは選手に戻っていた.ドイツの人たちは真剣にサッカーを遊んでいた.大学を卒業したら現役としては終わりなんてことはない.自分のプレーとは別に,自分のクラブの下のカテゴリーを教えたりもする.指導に携わりながら,自らもプレーをして,サッカーってやっぱり面白いなと思いながら,子どもたちにもこの面白さを伝えたいなと思うようになっていった.

 

 

 

何度かサッカーから離れようと思うこともあった.

中学生の時,全国大会に行けたのに自分のせいで負けた時は,本当にやめようか迷った.

高校の時,サッカー部の先生の授業で携帯が鳴って,そこからずっとメンバーに入れなくて,やめようかと考えた.

大学の時,自分がやっていることが実らなくて,勝てなくて,わけわからなくなって,休部した.でも,仲間が,「やっぱり必要だから戻ってきてくれ」と言ってくれて,最後まで大学でサッカーを続け,最後の試合で全てをぶつけて勝つことができた.

大学を卒業してからは,サッカーを指導をせず,研究をしようと考えていた.でも,高校の時の先生に,「サッカーの指導を学ばなかったお前に将来サッカーを教えられる子どもはどうなるんだ?」と言われ,釧路のトレセンで多くの素晴らしい指導者に出会い,常に学び続ける必要があることを改めて知る.

 

そして今,スポーツを子どもたちにどう指導するのかを学びながら,キーパー大国ドイツの専門性を選手として学べる環境にいる.

 

スポーツとはなんなのか.そんなことを考える時,サッカー抜きには語れない.この前見た試合は,勝ちを目指しながらも,勝ちを目的としない,そんな不思議なスポーツならではの感覚を味あわせてくれた.

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