子どもを夢中にするために
中野吉之伴さんへのインタビュー第2弾やっていきます!
第1弾はこちら!
http://takuemon.com/2019/07/05/子どもに教える専門性とは/
道具をどう使っていくか
梅村:指導する上で,指導者の声かけとは別に,道具や環境で気をつけていることは何かありますか?
中野さん:何だろう…目的がはっきりする使い方をするかな.当然サッカーだとゴールという存在が1番大事だから,出来るだけゴールを使った練習をしたいっていうのがある.やっぱり子どもたちにとっては,正規のゴールが1番使いたいもので,それがだめならミニゴールがあって,それがなかったら例えば,コーンのゴール,マーカーのゴールがある.同じゴールという存在だけども,捉え方で彼らにとってランク付けができてる.じゃあ,最初から正規ゴールを使ってやるよってやっちゃうと,すごく楽しそうにやるんだけど,次の練習でミニゴールも使うよって言うと,すんごいがっかりをしてしまう,オーガナイズ(練習の場づくり)の段階で,例えば,最後にゴールを使うから,正規用のゴールを置くと,ここのオーガナイズよりも外のオーガナイズに目がいっちゃうから,練習の合間にそっちに蹴っちゃう子どもが出たりする.だからあえて最初のゴールはちょっと離したところに置いとくとか,意識が向きにくいような状況にしておいて,最後にみんなで試合の時に運ぶっていうような方が,興味のコントロールをする上では,実は大事だったりするかな
梅村:ドイツだとマーカーとかも,大きさ違ったり,大きいマーカーの上にスティックを置いてというのも見て,その辺の使い方は新鮮だなと思いました.
中野さん:使い方… この道具をどうしようというよりも,こういう動きをしたいからこういう道具が必要になるというか.
梅村:目的が先ですよね.
中野さん:マーカーとかコーンをいろいろ置いて,ゲームやパスなどをやった時に,ボールをマーカーに当ててしまったり,当てることでパスが乱れることもあったりする.すると,「マーカーに当たったから乱れた」みたいな言い方をする子らが出るけど,でも,動きもしないマーカーに当てちゃうっていうのは,当てるほうに間違いなく責任がある.試合になったらみんな動き回るところをシュミレートっていうか,考えさせる.「いやいや,当てないようにするにはどうするか考えた方がよくない?」って言うかな.パターン練習とかでもパスを出して,動いて,もらい直して,次の選手にパスを出した時に,一個パスがずれたら,そこからだとどうしても次の選手に出す時にマーカーがあって出しにくいような状況がある.だったらそこから出さないでドリブルで持ち直して出したりしたらいいじゃない?っていう感覚を持ってもらうために,道具っていうのはあるのかなと思う.道具があるからその通りにやるわけじゃなくてね.
子どもたちに面白さを感じてもらうために
梅村:子どもたちに面白いと感じてもらえるようにしている工夫があったら,教えていただきたいです.
中野さん:結局何が好きかってことの逆算になるんだよね.俺が面白いと感じることをやってもきっと面白くないんだよね.彼らが面白いと思っていることは何かな?と考える.サッカーに来ている子はサッカーが好きなわけで,じゃあサッカーって何楽しいかなっていったら,シュートであったり,ボールを取って取られてだったりする.プラス何が楽しいかって言ったら,ゲームである以上勝ち負けがある.じゃあその要素をできるだけ取りいれて,わかりやすく勝った負けたっていうのが見れて,ちょっと頑張れば勝てるようになるし,ちょっと手を抜くと負けちゃうような状況にするのが大事かな.例えばリレーでばっと行ってばっと帰って来るような,同じことを同じ距離でやったら,絶対に背のおっきい子,足の速い子が勝つに決まってる.どんなに頑張っても,すぐに10メーター20メーターのスピードが上がるはずがないから,努力しても勝てないってなる.でも例えば,ルールがいくつか加わって,そんなに速くなくても,勝つチャンスが出て来るようなゲーム形式だったら,そこまでサッカーができない子でも取り組みやくなる.どうせやっても負けちゃうって思っちゃうのがよくない.
梅村:僕はこういうことを教育実習の時に思いました.走り高跳びの授業を僕は作っていたんですけど,70センチ飛んだから評価がD,1メートル飛んだらA,という評価のつけ方を学校はしていました.やっぱりおっきい子,足が速い子が跳べちゃうんですよね.そして小さい子や運動に自信のない子はやっぱり跳べなくて.あ,これは面白くないな感じました.できない子どもたちは,「どうせできないじゃん」「どうせDじゃん,Cじゃん」っていうような感じでした.そこにどっちが勝つかわからない要素を入れてあげるっていうのは確かにそうだなと思いますね.
中野さん:だから,基準値なわけよ.高飛びなんかの身体能力が大きく影響するものだったら,身長が影響しているわけだよね.それも低学年?
梅村:それは小学校3年生でした.
中野さん:そしたら,3年生の平均身長を140センチくらいとして,140センチの子が80センチ跳んだら何点,130センチの子はそもそもの身長が小さいわけだから,80センチ跳んだらプラスアルファーつきますよというようなボーナスみたいなものがあると,その査定のところが評価になるわけだよね.身体が小さくて跳べない子でも,自分のサイズに見合ったものを跳べたら,でっかい子が高いものを跳ぶのと同じポイントになるよってするとフェアになる.だって小学校が作ってる,カリキュラムに各学年平均の高さを超えなきゃいけないっていうルールもない.だって小さい子はどんなに頑張っても跳べないし,平均されたって困るわけだから.
梅村:面白さって確かにそうですよね,サッカーで言うと勝つか負けるかわからないところが面白いですよね.
中野さん:そうそう.だから高跳びで何楽しいっていったら,跳べることしかないわけだから,跳べないこといくらやっても楽しいわけないんだから.
生活にも必要不可欠な,認知能力
梅村:わかりました.最後に,練習で色を使ったメニューをやっていたと思うんですが,最近色を使ったようなトレーニングが流行ってるというか,認知能力のところで取り入れている,また,意識していることはありますか?
中野さん:認知は最近じゃなくて結構前から,ドイツではやられていること.ヨシ(中野さんのチームにいる別の指導者)がやってたトレーニングも,どこもやっているかというとそうではないけど,でもちょっとレベルが高いところに行ったら,ああいう練習はどこもやってる.ビブスの色何色も揃えたり,ゴールの色をいくつも分けたり,指導者の指示に対してアクションがどんどん変わってきて,認知っていうかカオス,一回頭が混乱する状態になってから頭で整理するっていうトレーニングは頻繁にやってる.それがやっぱり大事だと考えてるし,それの効果は見られる.
梅村:それこそ低学年でやることもありますか?
中野さん:AとBの選択肢があって,コーチがAって言ったらAのアクション,Bって言ったらBのアクションっていうのもそう.最初AとBって言ってるけど,それに色をつけて,黄色って言ったらこっちの最初のアクションを.それができるようになったらこのアクションをさらに増やして4つにして,ABCDと,色と,A−1のアクションは,ドルトムントや,バイエルン,シャルケ,ボルシアミュンヘンで伝えておいて,そのアクションにあった行動をするくらいのことだったら小学校低学年でも普通に楽しくやる.反射神経的もそうだし,パッと考えて行動に移すというのは,1つのコーディネーションの能力として大切になってくる.コーディネーションって一言で言うけど,コーディネーション能力っていくつもの要素で作られているものだから,それを一回ばらけさして,連続させるトレーニングは低学年でもやれるし,やった方がいいものだと思う.
梅村:あんまり日本にいるときに,僕が見なかっただけだと思うんですけど…
中野さん:多分少ないと思う.圧倒的に少ないと思う.やってるって言う人でも少ない.俺ももちろん自分の周りの指導者だったり,いろんな人の話を聞いた総括だけど,小学校低学年で認知だとか,戦術はいらないって言ってる人もまだまだ多いのはあるわけだからね.
梅村:なるほど,わかりました.ありがとうございました.
大変貴重なインタビューをすることができました.インタビューという形を取ることによって,指導者・中野吉之伴さんがどんな思いで子どもたちと関わっているのかがわかりました.中野さんのインタビューはここで終わりですが,この活動はこれからも続けていこうと思います.
中野さんのWebページはこちら.
https://www.targma.jp/kichi-maga/